光の化石 
不思議4
昨日の打ち上げ花火は超巨大だったから今日の夜も見えるだろう。あるいは、昨日私は寝ていてその花火を見ていないので、私は今日見ることができるだろう。
 ビッグバンの光は132億年前に地球を置き去りにしてしまったはず。
 ビッグバンの光がマイクロ波になって今見えているという。それは132億年前におこってやっと現在地球に届いたという。もっともらしいけど、そんなことがありえるわけがない。
 定常宇宙論のように地球が132億年前からずっとここにあって、132億年前に、132億光年先で起こった爆発の光が今届いたというならそれはありえるかもしれない。しかし、132億年前、ビックバンが起こったとき、地球は形は違っていても、まさにその真っ只中にあったはずである。第1点で述べたように、30万年後、ビックバンの光は地球を置いて、あっという間に宇宙のかなたに飛び去ってしまったはずである。それが、何で今ごろ凍りついて地球にやって来れるのだろう。
 たとえば、花火大会に行ったとしよう。とてもすばらしい花火大会だった。だけどその花火がどんなにすばらしくても、もう二度と見ることができないのは誰もが知っている。昨日の花火はすごく大きな花火だったから、きっと今日も見えるよ、なんて子供だって思わない。団子なら昨日多すぎて食べ切れなかったから今日食べるということもありえるけれど、花火は、大きすぎて全部見れなかったからその分残っているというわけにはいかない。
 だけど天王星で高性能の望遠鏡を持った天王星人なら、3時間後、はるかかなたの地球上に上がっている花火を見ることができるだろう。最初から天王星はそこにあったから。でもそれもせいぜい2,3時間で、バンバンと上がって、終わったらそれでおしまい。天王星人だってもう二度とその花火を見ることができない。400年後、北極星人は、その花火を見るだろう。(実際は、北極星から地球さえ見えないから、その上で光る花火は見えないけど。)でもそれも2,3時間。揚がって、一時見とれて、花火大会が終わればおしまい。一度花火を見た者は、二度と花火を見ることはできない。光より速く飛んで、その光に追いつくことができるなら別だが、それ以外は二度と見ることはできないはずなんだと思うのだけれど。
 そう、地球は、大昔に一度ビッグバンという超巨大花火を見てしまっている。花火大会の会場にいたように、地球はそのとき、ビッグバンの真っ只中、ビッグバン花火大会の会場にいた。そして、花火が終わるように、38万年続いたビッグバン巨大花火大会も終わってしまった。
 それから132億年の間、地球は長い旅をしてきた。ガスになったり、巨大な燃え盛る星になったり、爆発をしてまたガスに戻ったり。そして今、宇宙のこの場所まで流れてきた。
 その間に、ビッグバン花火大会の光(そんなのがあったとしたら)も、はるかにはるかに遠い旅をしているはずだ。それは、去年の花火の光が、1光年(9.5兆キロメートル)先の宇宙を、毎秒毎秒30万キロメートルの速さで遠ざかり続けているのと同じように、132億光年先の宇宙を輝かせながら、秒速30万キロメートルで遠ざかっているはずである。
 だから、人類はビックバンの光を見ることができない。もちろん、ビッグバンの爆発は、比べ物にならないくらい超巨大だから今も見られるとか、そのとき人はいなかったんだから誰も光を見ていない、だから今見られるという人は、表題のように、今日、昨日の花火会場に行けばよい。
 ただ、ビッグバンの光だけ特別で、(確かにビッグバンは特殊だけど。)飛んでいかずに、海水が海に満ちているようにべたっと宇宙に満ちていることができるなら別だけど。
蛇足 
 先に述べたように、ビックバンの後に宇宙の晴れ上がりが訪れたとき、地球もまたそこにあったはずである。地球もビックバンによって生まれたはずなのだから。もちろん、姿かたちはまるで違っていて、ばらばらな、光や、電子や、原子であっただろうけど、何十億年か後、それらが集まって地球の形に変化することになるものたちがあったはずである。ということは、宇宙の晴れ上がりの光(宇宙背景放射)を写真に撮るということは、132億年前にビッグバンの一部となって地球が出した光をも写したということである。 
 昔の自分をもう一度見るなんてそんなことができるわけない。たとえば、昨日地球があった場所(計算すれば出るでしょ)に望遠鏡を向けても地球が見えるということはない。3分前自分が飛びたった羽田空港の滑走路をいくらすばらしい望遠レンズのカメラで写したって、自分の乗った飛行機が写るわけがないように 。
 1ヶ月前の地球があった場所に望遠鏡を向けたらどうだろう。見えるわけないと誰も思うでしょう。1億年前地球があった場所ならどうだろう。もちろんそこにはもう地球はないよね。地球はここにあるのだから。
 では45億年前ならどうだろう。地球ができようとしておそらくガスや塵の形でいたころ。地球の形じゃないから見えるかしら。まさかと思うでしょ。では、もっとさかのぼって、100億年前、銀河系ができたころではどうだろう。将来地球になる物質はばらばらで、いったいどんなものか判別もつかない。これなら見えるだろうか。見えそうな気がした。なんだか得たいが知れないから見えそうだね。でも、見えないんだよね。天の川銀河は今ここにあるのだから。
 では、どうして、132億年前の地球を写真に撮ることができたのだろう。132億年前なら撮ることができるという理由って何だろう。(不思議1でその理由みたいなものを書いたけど、理由になってないとおもうんだよね。)ビックバンは特別で、物理法則に従わないから、何があってもOKだから。ちょっとそれは便利すぎないかな。
まとめ
 自分の過去を見ることなどできない。たとえ、それがビッグバンであったとしても。いや、人工衛星KOBEはちゃんと宇宙背景放射の写真を撮った。あれは何だということになリます。それは、簡単です。ビッグバン説の出る前から言われている、宇宙塵の出す光です。何の根拠もなく今は葬り去られているようですが、やがて復活することでしょう。
追記
 先日見た「NYUTON」という雑誌には、ビッグバンは137億年前と書いてあった。本によって宇宙の年齢が違う。最新情報は137億年らしい。といっても、これもこれまでと同じように仮説に過ぎない。ほんとはビッグバンはなかったりして。という仮説もいまだに存在する。多数決をとれば負けるけどね。
つづく
03年10月13日
妹空並刻記

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